2010年4月20日火曜日

響をめぐる冒険

ラジオといえば、最近村上春樹の「辺境・近境」を読んで、こんな話に行き会った。
文章を読んだり書いたりする機会を意図的に増やしている最近の僕にはなかなか興味深い話だった。以下、一部省略したものを紹介。


故郷の村を離れ都会へと出てきたとあるインディオの青年のお話。
彼は彼の故郷の村においては飢えたことがなかった。
貧乏な村だったが、もし彼がお腹を減らしているとしたら、誰かに
「こんにちは。」
と挨拶をするだけでよかった。
すると、相手はその声を聞いて
「ああ、おまえは腹を減らしているようだな。うちに来てご飯をお食べ。」
と言ってご飯を食べさせてくれた。
「こんにちは。」
という言葉の響きかたひとつで、相手が空腹かどうか、からだの具合が悪いかどうか
までちゃんとわかってしまうのだ。
都会に出たばかりの青年は、お腹が減るといろんな人に向かって
「こんにちは。」
と言ってまわった。でも誰も彼にご飯を食べさせてはくれなかった。
彼はお腹が減って声が出なくなるまで
「こんにちは。」
と言ってまわった。そして最後に彼は認識した。
「ここでは誰も言葉の響きというものを理解しないのだ。」と。



ラジオは音のみのメディアなので、ある意味響きがとても伝わりやすい。むしろ表情が見えない分、より言葉の響きに注目してコンテンツを提供しなければならない。
文章にも文章の響きがある。文章がそもそも言葉によって裏付けられたもの、それは言葉の響きととても似ていて、でも違う部分もある。
これは読者としての感想だが、やはりいい作家の文章にはいい響きがあるような気がする。
響きについて今はまだうまく言葉にできないので、どんな形でも、しばらく響きに注目してみようと思う。それこそ誰かと話すくらいのことでも。普段は無意識にやっていることかもしれないが、それを意識的に行うというのは案外なかなか難しい。無意識を意識に浮かび上がらせることができれば、何かがわかるかもしれない。寝起きのメガネや出がけの鍵とかね。



おまけ
「こんにちは。」ゲーム。
様々な状態を「こんにちは。」という言葉の響きで相手に伝えるゲーム。
ルール
・複数人でやる。ふたりでもいいけどちょっと盛り上がりにかけると思う。
合コンではやらない。たぶん盛り上がらない。でもこれで盛り上がってくれる女の子はきっといい子。
1,まず、青年役を決める。青年役をやるのは女の子でもいいよ。
2,青年役はまずお腹がすいている状態の
「こんにちは。」
をやる。全員それを理解している。
3,次に青年役は何かしらの心理状態を思い浮かべ(最初は簡単なのがよい。あんまり奇をてらったり受けを狙うのは面白くないよ。)その状況を演じて
「こんにちは。」
という。
4,村人役(ほかの連中)はその
「こんにちは。」
を聞いてどんな状況なのかを当てる。ただそれだけのゲーム。

なんだか眠れない、そんな夜には、言葉の響きに耳をすましてみるのはいかがかしら。

あと誰か僕と「こんにちは。」ゲームしてください。

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