2010年7月6日火曜日

うなぎのぼり


うなぎのぼりという言葉があります。物事が上り調子だったりしてぐんぐんのびていく様を表す言葉、だと私は思っています。
しかし、実際にうなぎがのぼるところを見たことはありません。もしくはうなぎが何かをのぼる、という物語を読んだこともなく、映像作品を見たこともありません。
自分が見たものが全て、だとするのは危険な思考ですが、もしかしてあなたもうなぎがのぼる姿を思い浮かべることができないのではないでしょうか。だとしたら、うなぎのぼりという言葉は、私たちにとってどのように担保されて日々使われている言葉なのでしょうか。
こういうとき現代社会というのは便利なもので、世界中の親切な誰かが書いてくれたウィキペディアで、答えを探すことができます。そこには一説として、うなぎの川を遡上する能力の強さから来た言葉、と書いてありました。
おそらく天然うなぎがいっぱいいた時代に生まれた言葉でしょう。私にとってうなぎの話といえば江戸時代しかありません。世の中には馬鹿な人というのがいるもんでして、長屋で一番馬鹿なはっつぁんがうなぎがくいてえと思いましたところ悪友のゴン左右衛門が「はっつぁん、はっつぁあん!」とやってきまして
と、落語の影響でしょうか、とにかくうなぎといえば江戸時代なんです。
うなぎのぼりと聞いてまずぬるぬるのうなぎを捕まえようとしたうなぎ屋の手からうなぎが力強く身体をくねらせ、青い空に向かって逃げようとする、そんなイメージを思い浮かべます。
失敗してまた桶にうなぎを落としたうなぎ屋がカミさんに
「何やってんだいあんたは!」
と怒られたうなぎ屋がなにくそ!とむきになって何度もうなぎを捕まえようとし、ようやく捕まえたころにはすっかり弱ってしまったうなぎ、
「あんたそれじゃあ売り物にならないじゃないかい!うちはうまい鰻を食わせるってんでご近所さんにもひいきにしてもらってるんだよ!」
と叱責されるうなぎ屋、それを見て何かをひらめくゴン左右衛門、最後はここらで一杯肝吸いが怖いと。
夜中にこんな鰻の話をするのは、テレビを見ていたら一〇時くらいにうまい餃子をタレントが食べていて、腹が空いた上に腹が立ったので、この感じを共有したかったのです。皆さんの文句は怖くありません、いや怖いです、ほんとの意味で。落語的には怖くないです、腹いっぱいです。本当に。

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